慶應義塾大学病院 周産期・小児医療センター

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肺高血圧症診療チーム

メンバー
慶應義塾大学病院 周産期・小児医療センター 心臓病♥総合治療チーム 福島裕之

肺高血圧症をお持ちのお子さんとそのご家族の方々へ

<肺高血圧症チームからのお知らせ>
肺高血圧症診療チームでは、「肺高血圧症患者会との協働による難病患者の実情と支援に関するアンケート調査」を開始しました(詳細はこちらをクリック)。

<はじめに> 肺高血圧症は「肺におこる高血圧」のことです。米国肺高血圧症協会の啓発キャンペーンで使用されたイラスト(図1)をご覧になると、少しイメージがわかるのではないでしょうか。高血圧は身近な病気で、治療薬もたくさんあって、新聞、テレビ、健康関連の本にもしばしば登場します。けれども、「肺におこる高血圧」である肺高血圧症はご存じない方が多いと思いますし、「聞いたこともない、何だかとても怖い病気」という印象を持たれていると思います。そんな肺高血圧症をお持ちのお子さんのために、私たち治療チームは、「考えうる最高の医療と熱い情熱」をもって、いつでも診療ができるスタンバイ体制をとっています。 肺高血圧症診療チームには、以下のように様々なメンバーが所属しており、皆で力を合わせてお子さんをサポートします。 ・小児科医(診療全体のコーディネート、薬剤治療など) ・小児心臓外科医(心臓手術など) ・小児外科医(中心静脈カテーテルの挿入など) ・小児病棟看護師 ・薬剤師 ・臨床心理士(精神面のサポートなど)

図1:米国肺高血圧症協会の啓発キャンペーンで使用されたイラスト

<肺高血圧症は難病です> 表1に特定疾患治療研究事業の対象疾患、いわゆる難病の一覧を示します。肺高血圧症にはいくつかの分類があるのですが、そのうちの2疾患が事業の対象疾患に含まれています。この点からもお分かりのように、肺高血圧症は治療が困難な、いわゆる難病です。 肺高血圧症と診断されたばかりの方、あるいはそのご家族の方は、肺高血圧症患者さんをどのように想像されますか。寝たきりの人ばかりだとお思いでしょうか。もちろん、皆さんなにかしらのご苦労がおありですが、元気に日常生活、学校生活、社会生活を送られている方もたくさんいらっしゃいます。例えば、写真1の患者さんは大学の野球部に入って、元気に活動をされました。この方は、実は特別な肺高血圧症治療薬の在宅持続静注療法を行っているのですが、外見からは輸注ポンプの存在も分からないでしょうし、プレーしている姿は健康な大学生に見えてしまいます。 肺高血圧症は確かに治療が容易ではない難病ですが、ずっと入院されている患者さんばかりではなく、外来通院・在宅ケアを行いながら、皆さんの身近なところで生活をされている方もおられることを、はじめに知っていただきたいと思います。

表1:特定疾患治療研究事業の対象疾患一覧  

写真1:ある肺高血圧症患者さんの様子 (ご本人の許可を得て掲載)

<肺高血圧症とは> 図1のイラストを改めてご覧下さい。血圧を測定するマンシェット(通常は腕に巻いて使用しますね)が肺に巻きつけられている印象的なイラストです。傍らには、the other high blood pressure(もうひとつの高血圧症)と書かれており、肺高血圧症とは、肺に生じる特別なタイプの高血圧症であることを示しています。 図2に健康な方の、図3に高血圧症患者さんの血液循環を示します。高血圧症患者さんでは、全身の動脈に硬化がおこり、大動脈(体の血管)の圧が上昇し、左心室に肥大を生じます。これに対して、図4に肺高血圧症患者さんの血液循環を示します。肺高血圧症(正確には肺動脈性肺高血圧症)の本態は、図5に示すように、肺の末梢の動脈の内腔が狭くなり、血液が通過しにくくなることです。その結果、図4のように肺動脈圧が上昇し、右心室に負荷がかかって拡大し、隣にある左心室にも影響がおよび、最終的には体への血液の循環が障害されてしまいます。 血液循環が障害されて、体への血液(酸素)の供給が不十分になった結果、肺高血圧症患者さんは息切れ、めまい、立ちくらみや失神などの症状を呈することになるのです。

図2:健康な方の血液循環 (肺高血圧症読本より引用) 図3:高血圧症患者さんの血液循環 (肺高血圧症読本より改変・引用)
図4:肺高血圧症患者さんの血液循環 (肺高血圧症読本より改変・引用) 図5:肺高血圧症のおける肺血管の変化 (肺高血圧症読本より引用)

<肺高血圧症に対するイメージ> 私が医師になった昭和63年頃の肺高血圧症に対するイメージは、「有効な治療法がない疾患」であり、事実、大半の患者さんが亡くなって行かれました。しかし、現在は「治療が可能な疾患」にイメージが変わりつつあります。その最大の要因は、有効な治療薬が開発され、日本でも使用可能になったことです。表2に日本で使用可能な肺高血圧症治療薬を示します。写真1の患者さんも、1999年に認可されたエポプロステノール持続静注療法を導入することにより、劇的に症状が改善しました。 さらに、肺高血圧症の治療には、内科的治療薬に加えて、状況により、在宅酸素吸入療法、肺移植手術が行われています。 昭和63年当時、子どもが肺高血圧症を発症した場合、診断後の平均余命は約2.3年といわれ、大変厳しい状況にありましたが、現在は多くの肺高血圧症をもつ子どもたちが成人にまで生き延びるようになりました。

表2:肺高血圧症治療薬の進歩(年は日本で使用可能となった時期を示す)

エポプロステノール(フローラン)

1999年

ボセンタン(トラクリア)

2005年

ベラプロスト徐放薬(ベラサスLA・ケアロードLA)

2007年

シルデナフィル(レバチオ)

2008年

タダラフィル(アドシルカ)

2009年

アンブリセンタン(ヴォリブリス)

2010年

<小児の肺高血圧症診療に関する展望> これらの点を踏まえて、私たちが考える、小児の肺高血圧症診療に関する展望をお示しします。医療者は、当然ですが、さらに身体的な問題を解決することに全力を尽くし、同時に精神的なケアも行います。身体的な治療という点では、近い将来、新たな肺高血圧症治療薬が日本で使用可能になる、あるいは新たに開発される可能性が十分あります。また、遺伝子学的な手法も、治療に取り入れられる可能性が出てきました。精神的なケアの必要性も広く認識されつつあり、私たちの医療チームにも臨床心理士が加わって下さるなど、具体的な成果も見られるようになりました。 肺高血圧症の患者さんご本人たちには、社会からのサポートに対して、ご自分が成長して社会人となったときに、自分にしかできない方法で、社会に貢献をしていただきたいと思っています。私の患者さんで、肺高血圧症に対して肺移植手術を受けられた方が、今年社会人となり、仕事を始められました。仕事を続けることは、体力的にも大変なことと思いますが、社会人として立派に働いている姿を拝見し、肺高血圧症の患者さんと社会との、相互理解の上に成り立った、よい関係を見せていただいたように感じました。 本稿をお読みくださった方々が、肺高血圧症について理解を深め、希望をもって肺高血圧症の治療に臨んでくださることを願っています。

<慶應義塾大学病院 周産期・小児医療センターへの受診方法> 随時、肺高血圧症の診療を受け入れています。心臓病♥総合治療チームによる肺高血圧症の外来診療は、主に水曜日の午前・午後、第2・4土曜日の午前に行っています。現在おかかりの医療機関に紹介状を作成していただき、慶應義塾大学病院初診予約センター(電話:03-3353-1257、http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/gairai/をご参照ください)を通じて福島の外来に予約をお取りください。 また、病気のことについてEメールでお問い合わせをいただいても結構です。福島fuku-h@z7.keio.jpまでご連絡ください。

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